そもそも、服借りればって言ってきたのは向こうの方だ。それなのに、あの態度は一体何なのか。そして、牧原の意味のわからない行動。疑問と怒りが混合して、頭の中はぐちゃぐちゃだった。



「はあ…」



 思わず溜め息が漏れてしまう。


 リビングの時計の秒針の音が、リズム狂うことなく、時を刻む。やがて、階段を降りてくる音が耳に届いた。



 …牧原、来た。



 あたしはリビングのドアに視線を向けた。


 ドアが開かれると、当然ながら牧原が入ってきて、あたしと目を合わせたまま、何故かドアの前から動こうとしない。



「牧原、こっち来てよ。ちゃんと話したいんだから」

「…こっち来てって、俺の家だし」

「……」



 ――そうだけど、さ。



 牧原は、渋々こちらに向かって歩み寄り、あたしと同じソファーコーナーに腰を下ろした。



「で、さっきの態度は何だったの? こっちにしてみたら意味がわからないんだけど」



 あたしは腕を組みながら、その理由を問い質す。牧原は、はあ、と大きな溜め息をこぼした。



「ていうか、あれは露出しすぎだろ。目の行き場に困るし、見慣れないわ。あれ」

「さっき似合ってるんじゃないって言ってたじゃん。あれは嘘? あたしだってね、皆の前に出るのすっごく恥ずかしかったんだから。けど、新しい自分を知って、こういうのも悪くないかなって、そう思ったの!」

「何でそんなにキレてるんだよ」

「あんたがそういう態度取るからでしょ」



 あたしと牧原は、もう怒鳴り合いの話し方になっていた。



「あのね、俺は心配なの。そういう格好して出歩くのが心配なわけ。わかる?」

「何それ。あんたってあたしの何なの? 何でそんな心配されなきゃならないわけ? 元はと言えばあんたが服貸すって言ったんじゃん!」



 あたしの中ではもう、牧原に対する怒りがピークに達していた。