Sweet Love

 …裕子、さんって。



「裕子さん……ですか?」

『そう。裕子さん。ちゃん付けするのは俺、ちょっと抵抗あるんだよね』

「…なんですか、それ」



 思わず声が震えたが、普通を保とうと息を殺す。笑いを堪えるのに必死だった。バカ笑いをしそうになり、危うかった。



「…それならいいですよ。“裕子さん”で」

『…それじゃあ、裕子さんの携帯の番号教えて』

「あ、ハイ」



 口頭で自分の携帯の番号を伝えると、誠二先輩はそれを二回ほど繰り返して確認をとってきた。



 ていうか、麗美から番号聞けばいいのに。

 誠二先輩って天然なのかしら。



『長くなってごめん。あ、アイツに電話代わろうか?』

「あ、じゃあ、ちょっとだけお願いします」



 すると、電話越しに誠二先輩の叫ぶ声が聞こえてきた。



『おーーい、タコ助』



 しばらく経つと、よくわからない激しい物音が電話越しで伝わってきた。



『兄ちゃん、…タコ助ってなによ』



 …タコ助って何だ?



『ほい。携帯ありがとさん』

『……まだ繋がってる。も、もしもし? 裕子?』

「もしもし」

『もしかして、い、今の筒抜けだった?』

「うん。全部聞いてた。…タコ助って呼ばれてんの?」

『あ、うん。いつも違うあだ名で呼ばれるの。タコ助って呼ばれたのは今日が初めて。でも、ひどいでしょ。毎日兄ちゃんには本当にイライラしてるの、わたし』



 麗美の拗ねた顔が思い浮かぶ。



「そうなんだ…。なんか意外」



 あんなクールな顔をして、タコ助、…だなんて。


 よく思い付くなぁ、とあたしは変に感心していた。