「うん、絶対今日先輩にメールする。…ね、牧原。先輩とうまくいくように協力してよ」



 歳上に対して免疫ないし、それに、性格上厄介な部分もあるので正直不安だらけだ。


 だから、牧原がほんの少し練習台として付き合ってくれれば――。


 変な思い付きだけど、これならあたしも堂々と先輩にアタックできるかも知れない。



「協力? 何で俺が?」



 牧原は、露骨に嫌そうな顔で眉間に皺を寄せる。



「まあ、そんな顔せずに。協力っていうか、デートの練習とか、トークの練習とかあたしに特訓してよ」

「…特訓って言われても、俺は何を?」

「ちょっと歳上っぽく気取って先輩になりきってくれればいいからさ」

「え…そんなの無理だって」

「いや、顔は無理なのわかってる! 雰囲気で、なりきってくれれば…」

「いや、顔じゃなくてさ、俺は嫌だって。…そんなの」

「牧原、お願い」



 あたしは指を組みお願いポーズをして牧原に強請った。



「お願い!!」



 牧原は、呆れ顔で深い溜め息をついた。



「――わかったよ。ただし、条件がある」



 やった。やった。やったあ。

 …え、条件付き?



「…条件?」

「この特訓は二人でいるときだけに限ること。麗美ちゃんと萩原には内緒で二人だけの秘密にすること。もちろん先輩にも口外しないこと。…これが条件」



 牧原は淡々と述べた。まさか条件を持ち掛けてくるとは思わなかったので、正直驚いた。



「わ、わかった」

「あ、あともう一個」

「何?」

「お前が先輩に告白して、無事めでたく付き合うまでの期間限定ってことで。俺達の関係ね」

「…関係?」

「そういう秘密の関係ね」

「あ、…ああ。そっちね」



 ははっと笑いながら、実は内心焦っていた。


 もう友達としてあたしの隣にはいてくれないのかと、一瞬思ってしまったのだ。


  ここからあたし達の関係は徐々に変わっていった。