牧原は、チョコを。あたしは今回、牛乳ソフトクリームを頼んだ。


 アイスを食べながら、牧原は言った。



「お前さ、これだけで暑いって言ってたら真夏になったらどうなんの? 体持たなくて倒れるんじゃない?」

「だって暑いのに弱いんだから、しょうがないでしょ」

「でもまだ初夏だぞ?」

「そうだけど、倒れたときは、牧原に沢山アイス買ってきてもらうからいーの」

「…なんだそれ。そういえばもうすぐでマラソン大会じゃん。お前できるの?」

「あー…多分即効でバタンキューだね」

「ダメだろ、それ」



 いつの間にか、こんな風に笑いながらいつものあたし達のペースに戻りつつあった。



「牧原さ、今日の昼休み窓から覗き見してたでしょ」

「…バレた?」

「え、あたしと目合ったじゃん」

「そうだっけ」



 ――いや、目合ったよね。

 しかもそのあと、逸らしてどっか消えたよね。



「まあ、いいわ。これは友達としての報告なんだけど…」

「何だよ、いきなり」

「まあ、聞いて。あたし、…松田裕子は先輩に告白しようと思ってます」

「こ、告白ーーー!?」



 無駄に告白の「く」の語尾を伸ばしながら、牧原の高くなった声が、店内に響く。他のお客さんが一斉にこちらを見て、視線がこちらに集中した。



「牧原!」

「あ、ごめん」



 牧原が声のトーンを下げる。あれが一瞬だったのか、あたし達への視線はどこかへ散らばった。



「それにしてもさ、何で告白?」

「 今日、先輩のアドレス貰ったの。好きな人だもん。チャンスでしょ? 別にすぐに告白しようとは思ってないよ。まあ、そのうちってこと」

「ほおー。そしたら今日このあと、メールするんだ?」



 牧原はつまらなさそうに、どろっと溶けたチョコアイスをパクリと口に含んだ。