「兄ちゃん、…ごめん」

「別に」



 まだ少し機嫌が悪そうだ。何もそこまで怒らなくていいのに。


 すると丁度、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。



「あ、行かないとまずいね」

「あ、はい」

「行くぞ」

「うん」



 わたし達は、急いで屋上を出る。屋上に繋がる階段を駆け下りたところで、各々の教室へ散らばった。


 萩原くんとわたしが教室に戻ると、裕子と牧原くんはにやにやしながらこちらを交互に見てきた。


 牧原くんは、終始ニヤついた顔のままわたしの席から離れ、自分の席に戻っていく。



「…裕子、わざと兄ちゃんに言ったでしょ。屋上にわたし達がいるって」

「ふふっ。だって昼休み終わりそうだったし、そろそろ戻って来るかなあと思ったら全然戻って来ないんだもん。心配だったんだから!」

「そ、それは…」

「もしかして、うまくいってた?」



 わたしはこくんと頷く。その瞬間、裕子に両手を取られた。



「えーー!! やったじゃんっ!!」



 握ったわたしの両手を嬉しそうに上下に揺らす。裕子の声が教室中に響き渡ったあと、クラスの子の何人かがこちらに注目した。



「おい、松田。…うるさいって」

「ハイハイ。あんたもなかなかやるじゃん」

「うるさいってば」

「なに不機嫌なってるのよっ」

「うるさい、バカ」

「バカとは何よ! バカとは!」

「ちょっとやめなよ、二人とも…」



 次の授業が始まるまで、しばらく二人の言い合いが続いた。





萩原くんと麗美の続きは、
to be continued...