今年の夏で、もう23歳。
もうすぐあれから5年が経つ。
「あっという間に5年か、長いようで短かったなー。 てか暑い...。」

高校の時に会った彼は今頃どうしているのだろうか。
少し思い出しながら懐かしいあの場所へ向かった。


誰とも揉めることも無く平穏に過ごし、私は高校2年生へと進級した。
「2年生か...。」
良く1年間バレなかったなー。
あの頃より隠すのも上手くなってきたし、何よりこんな力がバレたらダメなんだけどもね。
あぁ、憂鬱な気分だ。

「月詠(つくよみ)おはよー。」
「白木、おはよ。」
「俺らまた同じクラスだわ、宜しくな!」
「そうなんだ、宜しくね!」
「んじゃまたなー。」
「はいよー。」

白木 健 (しらき たける)、1年の時も同じクラスで明るくノリが良いからクラスの中心的な存在でムードメーカー。
でも、白木は自分がムードメーカーとしての自覚があるから、あいつもあいつで色々と悩んでるんだよな...。
直接悩んでるとも、そんな仕草を見せたことも無いから私からは聞けないけど。

「まひるー! おはよ!」
声でっか。絶対あの子だ
「凛、おはよう。 朝から元気だね。」
「だって新学期だよ、2年生だよ!?
あと、あの子も今日からまたいっしょみたいだから楽しみ。
んじゃまたね!」
「ちょっ、まっ...。 行っちゃったよ。」
私は少し呆れながらも凛の明るさのお陰で憂鬱さも少し和らいだ。

桐山 凛(とうやま りん)。
彼女は1年から同じクラスで唯一仲良しとも言える友達は彼女だけかも知れない。
それでも彼女に私の秘密を打ち明けることは出来ない。
信頼はしているが、凛は桐山家という有名な華道の家柄なのだ。
バカみたいに明るくて楽しそうにしていても、あの子も色々と抱えている。これ以上あの子に抱えさせたくない。

話を聞いて上げたくても、私にはそんな資格は無い。
相手が必死に抑え込んでいる感情を私は勝手に読み取ってしまうのだから...。
そう考え混んでいたらいつの間にか教室に着いた。
「隠し通せますように...。」
そう願掛けしながら教室の扉を開く。