さよならにキスを、想い出にハグを


さよならと言われ僕がしたことはあまりに少ない。携帯電話に登録した彼女の番号やアドレスは消してない。いまもNo.14に居座ってる。彼女から貰ったものも捨ててない。なんなら借りてた漫画も部屋の本棚に眠ってる。彼女が大学からバイト先へ行くこの間の10センチの距離が、五日前からの僕達の距離で一番近い。まだ彼女にメールも送る。とってもどうでもいいような他愛ない文章。ご丁寧に、彼女は五分と待たずに返信をしてきて、きっと誰も僕達が別れたなんて思ってない。むしろ、彼女だけが、僕と恋人を止めたと思ってるのかもしれない。胸の奥にはち切れそうな未練が押し寄せて、女々しいと笑われてもよかった。