「…何してんの」 この声…。 声がした方に振り向くと、千歳くんが左耳のイヤホンを外しながら下駄箱に近づいてくる。 「教科書とか下駄箱に入れてるんです」 「なんで?」 靴箱からスニーカーを取り出しながら、千歳くんが聞いてきた。 「傘忘れちゃって、このまま帰ったら濡れちゃうので」 「…ふーん」 千歳くんは、傘立ての中抜き取ると傘を広げて私の方に振り向いた。 「…入れば」