「友達なんていらない。
私は…友達なんて必要ないの。
ただ、祐介は……祐介は、私の事を理解してくれると…なんとなく感じたから…。」
音羽は、下を向いて話し出した。
「私は小さい時からピアノを弾いてた。
お父さんは、特に無理強いをしてピアノを弾かせたりはしなかったけど、お父さんのようにピアノを弾きたいと思ってから、私はプロになるために、お父さんに付いて世界を周るようになった。
ルクセンブルグの学校に入ってから、本格的にピアノ人生になった。
そこには、私より上手い人がたくさんいた。分かってたけど…世界を知って愕然とした。
だけど、“その人達もお父さんには及ばないから”って、私は自分に喝を入れて努力した。
だけど…‘才能’には敵わなかった。
周りは才能があるから…少しの努力で私を抜いて行く。
信じてた友人も、私を抜いてから人が変わったようだった…。
プロの世界なんてそんなものだった。
結果を残して…周りを蹴散らして…才能のない者を見下して……。
どんな人間も、‘自分が勝ってる所’を見つけたいと思ってるの!
謙虚なフリして、相手を見下してるのよ!
褒め言葉なんて上辺だけ!対人関係なんて、見下し合いの上で成り立ってるの!」
一気に言った音羽は、息を乱していた。


