目が合うと、一瞬驚いた表情をした音羽だが、すぐにいつもの“他人”の顔になり、僕の前を通り過ぎようとした。
……今日はそうはさせない。
『“三上さん”』
音羽の背中に声をかけた。
“他人”とはいえ、声をかけられて振り向かないのは逆に怪しい。
音羽は訝しげに振り返った。
「………何?」
知り合う前に聞いたような冷ややかな声。
……そうやって、周りと壁を作っているんだね。
僕はとびきりの笑顔を造った。
ニンッて音が聞こえそうな位の笑顔。
今までの僕はそんな笑顔作らない、目立たない一歩下がった立ち位置のヤツだった。
自分から他人に声かけるなんてしないヤツだった。
それを知ってる音羽は、思わず一瞬、目を見開いた。
『僕、上川祐介って言うんだ。』
あくまでも、僕らは学校では他人。
……ていう“設定”。
なら僕は、
『僕、君のファンなんだ。』
その設定を無理矢理にでも“現実”の僕らにするまでだ。
『僕と友達になってくれない?』


