―――――― 今僕は、音羽の病室の前に立っている。 もし音羽が起きていたら、また追い返されるかもしれない。 それでもいい。 僕はもう、覚悟はできているから。 病室に一歩足を踏み入れる。 僕の足音以外は何の音も聞こえない暗い空間は、さっきとは違い、何だか穏やかで落ち着いているように感じる。 声もかけずに、そっとカーテンに手をかける。 「………祐介?」 か細い、力のこもっていない声が、僕の中の何かを刺激する。