『理咲子ちゃん』
ダメだ…私…
頭が真っ白で何も考えられない
私の名前を呼ぶ楓 瑞樹の声が余計に私を現実から引き離す
『…理咲子ちゃん、帰るね』
また名前呼んだ…
私の手…何かに包まれてる…?
『今井行こ』
『え?いいの?』
『うん大丈夫』
『お前じゃねぇよ、理咲子ちゃんの方』
『だから大丈夫だって』
………
………柔らかい風が顔に当たり
私を惑わす匂いが
離れていくのが分かった
けれど私は
やっぱり楓 瑞樹との時間が非現実すぎて
なかなか
現実の世界へ戻れないようだ…
『おい!』
力強い声…
『起きろー!』
この声は…
かえ…
『理咲子!』
かえ…で?……みずき…じゃない…
あれ…真っ暗だ……私とうとう…
異次元の世界に飛んじゃったか?笑
『いい加減に起きろって理咲子!』
……!?
少しずつ意識が戻り
うっすらと見える景色に
『…マスター?』
『マスター?じゃねぇよ…ほらしっかり起きろ』
『へ…あ、え?』
あれ…
ここはさっき楓 瑞樹といたままの位置
寝てた…?
やばい…記憶がない…
『ったく…なかなか動かないと思ったら…寝てんじゃねぇよ』
『す…すみません…』
『まぁ仕方ないわな。ほら送るから支度しろよ』
『はい……ってあれ…?楓…瑞樹…』
跡形もない周りの状況
…夢…だったのかな
バイト中に寝ちゃってたってやつ…?
なんだかな…
『とっくに帰った!いつから記憶とんでんだ?』
『え?…ゆゆゆっ夢じゃないってこと??』
『……は?』
呆れた様子のマスター
そうだ…
夢なんかじゃない
はっきり覚えてる…
『なんか落ちたぞ』
…?
足元に何か落ちてる
拾ってマスターに渡すと
『おいおい…まじか…』
『どうしたんです?』
『お前のだ』
『私の?』
マスターから受けとった紙切れ
手のひらサイズの小さなメモ
『ついに、あんな大スターに気に入られたか…』
めずらしくマスターが動揺してる
そりゃそうだ
こんな私に
いや…こんな私が
こんなものを
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理咲子ちゃんへ
いつでも連絡して。
080-xxxx-xxxx
楓 瑞樹
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頂いてもよろしいのでしょうか……?

