ヒミツ恋 〜奇跡と運命〜




その日の夜



『おい理咲子、今日はもう上がれ』


『え…もう?まだ時間じゃ…』


『きっと客はもう来ないだろ』


『マスター…やる気ないだけでしょ…』


『アホ言え、だいたい10時過ぎてんだろーが、女の子は帰る時間だ』


『私の定時はまだですよ?』


『つべこべ言わず今日は帰れ』


『……』



そう…ここは&R


マスターに暇だから帰れと言われた


まだ2時間も働いてないし…



&Rは隠れ家的なBARだから常連のお客がちらちら来るくらいで、平日の夜なんかは確かに暇だ


けど気付いてる


最近マスターは私のことを“女の子”と強調してくるようになった



前からだけど…心配してくれてるんだよね




『じゃあお言葉に甘えて…』


『おう。お疲れ、気を付けて帰れよ』



エプロンを脱いで、荷物を持った時…



♪〜♪〜♪〜♪〜♪



お店の電話が鳴った


電話なんて珍しい…


マスターは電話を取ると、ジェスチャーで私に帰れと手で払う仕草をする



…分かってますよ…


そんな…手で払わなくても帰りますよー



『神田理咲子ですか?』



ん?


私の名前…



『えぇ、あ、この前はどうも。理咲子ならまだ居ますが…今からというのは…』



ちょいちょい!


完璧私のことだよね



『…それなら構いませんが、何名で?』



気になるー…


マスターは電話で受け答えしながら私を手招きする



『分かりました。ではお待ちしております。ありがとうございます。』



電話が終わった



『マスター?私が何か?』


『お前に予約だ』


『…はい?』


『30分後に2名来店だ。悪いが付き合ってくれ』



そりゃ付き合いますとも


もともと、まだ時間きてなかったし



……っじゃなくて


『予約って…誰ですか?私の知ってる人です?』

『ああ、理咲子どころか、みんな知ってる人だな』

『みんな!?誰ですかそれ!だいたい電話で私に予約するとか…』



…私の頭にふと過ぎった顔…



ま…さか…だけど



男前に微笑むマスターを見て余計…私の心臓は高鳴る


『も、もしかして有名人?』


『……』


『マスター?』


相変わらず微笑むマスターは喋らない


隠さないで教えてよ…



私の頭には……



贅沢かもしれないけど



楓 瑞樹




…しか浮かんでいない




予約制でもない&Rに、私宛で連絡してくるなんて…今までにないことだ


意味深に微笑むマスター



”また来るよ”




あるわけないと諦めたばかりなのに



欲にも度がすぎる…って現実に戻りつつあったのに



やっぱり


どこかで期待してる自分がいて



楓 瑞樹しか浮かんでこない私はもう…妄想しかできない恋する女子だ



楓 瑞樹だったら……いいのに



再びエプロンを着けて髪を束ねる



『マスター?来る前に教えてくださいよ』


教えてくれないマスターに私は寄ってたかる


『もうだいたい検討ついてるんじゃ?』

『検討って…』


おちょくられてる…!