カララーン…
っ!!
再びお店の扉が開く音に私は大袈裟な反応をする
『悪い悪い、待たせたな』
雨のせいか少し濡れた様子のマスターが戻ってきた
『……』
そりゃそうだ…泣
何かを期待した私が馬鹿だった…
『…何してんだ、行くぞ?』
『はい』
外へ出るとザーザー振りの雨
店の前に停めてくれたマスターの車に駆け足で乗り込んだ
マスターの車は運転席と助手席しかない
2人しか乗れない小さな車
けど前にマスターは言った
『小さいからって馬鹿にするなよ。そこらへんの車だったら5台は買える値段だぞ』
車に興味がない私は『へぇー』と感心したフリをしたっけな…
助手席に座る私の肩と運転するマスターの肩の距離はかなり近い
けど緊張なんて全くない
車内から外を眺めると、3時を過ぎているというのに街はまだまだネオンで賑やかだ
雨で濡れる窓ガラスをぼーっと見つめる
楓 瑞稀…
近かったな
2人っきりで話しちゃったな
思い出すと、まだ胸が騒がしくなる
また来るって言ったよね…
絶対来るって……
また…会えるのかな
楓 瑞稀に会える日がくるのかな
いやいや贅沢だな…私
きっとサービスで言ったんだ
芸能人だもん……
そんな夢みたいな約束…あるわけない…
今日は奇跡の日だったんだよね
一度会えただけで
話せただけで
もう最高のご褒美…
私だけに微笑んでくれた
あの時間は…
一生忘れられないよ……

