BGMもかかってない静かな店内
不思議と疲れた感じはない
最後にプロの派遣スタッフさん達が片付けやらをしてくれたから、私はそれほど疲れを感じることはなかった
まぁ眠気は多少……ある
椅子に腰掛けたまま、ボーッとマスターを待つ
『♪♪…♪…♪♪…♪』
鼻歌なんか久しぶりだ
思い返してみると顔がニヤける
初めての生芸能人……
楓 瑞稀……素敵だったなぁ…
目が合ったし…
気が付いたら私は楓 瑞稀のグループRED.Mtの歌を口ずさんでいた
ガチャ…
扉の開く音
マスターが入ってきたのかと思い、音のした方を見る
『…え…!?』
私は再び固まるはめになる
開いたのはトイレの扉だった
マスターは外へ出って行った…
トイレからマスターが出てくるわけがない
そう…マスターじゃないから固まってしまってるんです
か、楓…瑞稀……?!
『あれ…もう誰もいないんだ』
逆になぜ、まだいる…?
と、突っ込みたくなるお口もアングリ状態
『お?君、ここのお店の子だったんだね、お世話になりました』
『あ、い、いえ…こちらこそ…あ、ありが…とうございました!』
なぜいるの…?
楓 瑞稀が…なぜいる?
楓 瑞稀はハンカチで手を拭きながら歩み寄ってくる
私は椅子から立ち上がり、緊張がはしる
『ふふ…君面白いね、最初もそうやって固まってたもんね』
『……っ』
その面白そうに話す顔も輝いて見える
カッコいい…
…なんて余裕もなく
カチコチに固まってしまった私は直立不動…
『さっき少し聞こえてきたんだけど、RED.Mtの曲知ってるの?歌ってたよね』
『っ?!あ…えっと…すみません、知ってます』
オーマイガー…
究極に下手な私の歌が…
まさかまさかの本人に聞かれるとはぁぁぁぁー…

