怒らせてしまった。

晴登くんの気持ちを考えてなかったのは、私の方だった……?

僅かに残る手首の感触に、胸がずきずき痛む。

私が感じた怒りは自分勝手な思いからくるものだったと気が付くには遅く、反省したところで取り返しのつかない傷を彼に付けてしまったんだと頭を抱えた。

何が頼りにしてほしい、だよ。

頼りになるどころか、困らせただけじゃん。


「おい、どうした?」


神社からどこをどう通って帰ってきたのか、さっぱり覚えてなかった。

不意に声を掛けられて顔をあげると、すぐ近くに輝くんがいて彼の訝し気な瞳と目が合う。私はどうやら竹林の中をふらふら歩いていたらしく、「もう少しのところで山道を外れるところだったぞ」と注意された。


「ぼうっとしちゃってて、ありがとう」

「晴登のところの帰りか?」

「あ……うん、輝くんはお参り?」

「そうやけど、お前、どえらい顏してるけんど大丈夫か」

「どえらい顔って」


誤魔化して笑おうとしたけど、顔は引きつっていたと思う。

ショックを隠しきれず浅い息をする私に輝くんは「こっち」とだけ言い、強引に腕を引いた。