項垂れるようにオデコを自分の膝にくっ付けた晴登くんは、しばらくそうしたまま動かなくなった。重々しい息遣いだけが聞こえる。
こんな風に弱り切った彼を見るのも初めてで、私はどうしたらいいか分からず、ただ彼の隣で同じように体育座りをしていた。
ややあって顔をあげた晴登くんは、叱られた子供のような顔をしていた。
「父さんな、病気なんや」
「うん」
「あれ、芙海は知ってたんか?」
「あ、いや前に1度、薬を飲んでるところを見たことがあって。でも何の病気なのかは……そんなに悪いの?」
「薬さえちゃんと飲んでいれば大丈夫や、今のところはな。けど、いつどうなるか分からん。何かあった時、家に誰もおらんかったら大変やろ? だけぇ、通信で資格を取りたかったんや。そうしたら島から出んで済むのに」
そうか、晴登くんのところにはお母さんがいない。
見たところお手伝いさんもいないようだから、晴登くんが島から出てしまうと宮司さんは1人になってしまうんだ。親戚の人もいないのかな?
優しい晴登くんの気持ちも分かるし、でもきっと親なら大学に行きなさいって言うだろう。うちだってそうだもの。
