晴登くんのその言葉は、私の胸を強く貫いた。

――――大事なのは、約束を守るため努力をすること。

だけど、カケルくんには少し難しかったみたい。

ポカンとするカケルくんが可愛くて両側から頭をワシャワシャ撫でると、彼はくすぐったそうにしながらも嬉々とした声をあげて無邪気に笑ってくれた。

――――例え間違えたとしても、その分また努力を、

カケルくんは私なんかよりずっとずっと強くて偉い。お母さんとの約束を守るためとはいえ、たった1人で森にやって来るのは怖かっただろう。それでも、勇気を出してどんぐりを……。

ん? そういや、どんぐりってなんだっけ?


「カケルくん、さっきどんぐりって言わなかった?」

「うん! いったよ」

「カケル、どんぐりってなんや?」

「どんぐりはどんぐりだよー! 知らないの? どんぐり集めておねがいごとしたら、どんぐり姫が叶えてくれるんだよ」


ぱぁっと、向日葵のような笑顔が弾ける。

今度は私たちがポカンとする番で、晴登くんに至っては軽く口を開けたまま眉根を寄せて固まっていた。

カケルくんが言っているのは、どうやら絵本の話らしく、お母さんが早く退院できますようにと、どんぐり姫にお願いをしたかったそうだ。

それで、どんぐりの木があるこの森に入って夢中で集めているうちに迷子になり、歩き回った結果、私たちの前に現れた。



「それで、どんぐりは集まったのか?」

「それがねぇ、歩いているうちにどっかいっちゃったの」


悲しそうに眉尻を下げるカケルくん。

彼は自分のズボンのポケットに手を入れて不思議そうに首を傾げている。集めたどんぐりが消えちゃうなんて摩訶不思議。

……と言いたいところだけど、からくりは単純そのもので、そのポケットには大きな穴が開いていた。