「あぁ、もう始まってる。遅くなってごめんねぇ」

「芳子さん来てくれたんね。さぁさぁ前の方へどうぞぉ」


お葬式の時もそうだったけど、この島では自宅で法要を行うのが当たり前で、開けっ放しにしてある玄関から近所の人がぞろぞろ入って来る。

みんな、ハナばぁちゃんの死を惜しんでくれた人たちだ。

私はその人たちに席を譲りながら、お母さんや和枝おばさんと一緒に頭を下げ続けた。

遺影のおばぁちゃんは、やっぱり悲しそうに笑っている。



「芙海、久しぶりじゃね!」


法要は30分程度で終わり、後は歓談となったところで痺れた足を伸ばしていると、ポニーテール頭の女の子が私の隣に腰を下ろした。

この家の隣に住んでいる優芽(ゆめ)だ。



「うん、久しぶり」

「わぁやっぱり都会の制服は可愛いねぇ、大人っぽく見える」

「それさっきも和枝おばちゃんに言われたけど、普通の制服じゃない?」

「はぁぁ? 普通ってのは、こーゆーダサい制服をいうんだよぉ」



そう言って口をへの字にさせた優芽は、自分が着ている制服の裾を引っ張る。

そういえば去年のお葬式の後も同じようなことを言って私の制服を羨ましがっていたっけ。あまりにしつこいから貸してあげたら、そのまま走って行っちゃって優芽のおばさんに怒られてたよね。

相変わらずだなぁ、優芽は。