「今日は晩飯作んなくていいから。
引っ越ししたばっかりで大変だろうしな」
「え?」
気に入られてしまって落胆していると先輩が意外な言葉を言ったから私はきょとんとした表情を先輩に向けてしまった。
もしかして、気をつかってくれているの?
案外、優しいところもあるのかもしれない。
「お前、ボーッとして荷解きに時間かかりそうだし」
「なっ…!」
ちょっとでも“先輩はいい人かも!”なんて思ってしまった私の気持ちを返してよ!
やっぱり先輩はすっごくイジワルな人だ!
名前も知らないけど、それだけは分かる。
「ほら、ゼリー持って帰れ」
先輩は私を立ち上がらせて手にゼリーを持たせるとくるりと玄関の方に体を向けてポンッと背中を押した。
「お、お、お邪魔しました…!」
やっと、帰れる!と思ったら嬉しくなって走って玄関まで行って先輩の部屋から出た。
そして、隣の自分の部屋に戻った。
「ハァ……私、どうなっちゃうのかな?」
先輩と出会ってしまったせいで
この先、不安なことがたくさんでてきてそっと重いため息をこぼした。