掴んだのはもちろん先輩で。
振り向いた先で視界の先にいる先輩の表情は恐ろしいほどに笑っていた。
また嘘の笑顔だ。
悪魔の笑顔にしか見えないのは私だけなのかな……?
「誰が帰っていいっつった?」
低く甘いトーンで言うから嫌でも心臓は反応して加速していき、私の体温を一気に上昇させる。
「……自分の意思です」
「お前の意思なんて知るかよ。
お前は黙って俺の言うこと聞いてればいいんだよ」
「言うことを聞く…!?そんなの嫌で……」
誰がこんなヤツの言いなりになんて…!と思ってつい大きい声を出しかけたけどその言葉の続きは途中で消えていった。
だって、目の前にいる彼がにっこりと気持ち悪いくらい笑って私を見ているけど、
瞳はドス黒くてその目は「聞くよな?」と言っているかのよう。
お、恐ろしい…!!
二重人格というのはこんなにも恐ろしいものなの…!?
みんな騙されまくっているよっ!!
あの胡散臭い笑顔に騙されているんだって!



