「俺、帰るわ」


「え、なんで?家に寄っていってよ」


「今日は遠慮しとく」


つーか、お前の姉貴にも会いたくねぇしな。
今頃、花蓮ちゃんは何をしているんだろう。


「あっ…ちょっと!」


俺は安川をおいて、そそくさと家へと向かって歩いた。


だけど、俺の部屋の前に小さく丸くなって
しゃがみこんでいる子が目に入った。


……嘘だろ?


俺は今夢でも見ているのだろうか。

だって、俺の視界の先には
愛しい花蓮ちゃんがいるんだから。


「……なにしてんの」


無意識に漏れた声に彼女が
ハッと弾けたように顔を上げた。


「律哉くん…!」


そういうと、彼女は俺の方へと駆け寄ってきて俺の手をぎゅっと小さな手で包み込んだ。


久しぶりに触れた花蓮ちゃんのぬくもりに懐かしいときめきが蘇ってくる。


「………帰れよ」


だけど、もう俺たちは元には戻れない。
花蓮ちゃんを傷つけるわけにはいかねぇんだ。