「なんで…そんなの決めつけるの?」
「律哉先輩が中学の時どんな人だったか知ってる?
律哉先輩が必死に隠してきた秘密をあんたは知ってるの?」
律哉くんの…秘密?
安川さんが言っているのはきっとたまに律哉くんが表情を曇らせて苦しそうな顔をするときと関係している秘密だ。
「……」
「私は知ってる。全部ね。
だから、これから彼を支えられるのは私だけなの」
私じゃ律哉くんを支えていくことはできないのかな?
「てことで、さっさと別れてね」
それだけ言うと安川さんは颯爽と帰っていった。
安川さんがいなくなると、ポロポロと冷たい廊下に私の涙がこぼれ落ちた。
「私…っ、何も知らない…っ」
律哉くんのことを知っていたつもりだった。
だけど、本当は何も知らなかった。
いや、律哉くんには何かがあるということに気づいいたのにそれを聞けなかったのは私が弱かったから。
安川さんは律哉くんの秘密を知っている。
それがどんな秘密なのか私には分からないけどきっととんでもなく辛いことだと思う。
それくらい、律哉くんの表情は暗くなるんだ。
泣き止むと、まだ腫れていて赤い目を隠しながら律哉くんのいる教室まで向かう。



