「みんなの勢いがすごすぎて…」


「まあ、なんといって王子様の澤井先輩だもんね」


王子様、か。

王子様なのはそうかもしれないけど
律哉くんは腹黒王子だけどね。


「さあ、応援するよ!」


そんな麗奈ちゃんの言葉で
私はグラウンドの方に視線を向けた。


「いちについて、よーい!」


──パンっ!

音が鳴った瞬間、みんなが一斉に走り出す。

律哉くんはアンカーらしい。
本当にさすがだなあ、と思う。


「頑張れー!永田先輩!!」


麗奈ちゃんは走っている永田先輩に声援を送っている。

もうすぐ、律哉くんの番。

永田先輩が追い上げてくれた今は二位。


そして、いま、律哉くんにバトンが渡った。


「澤井先輩ー!!」


女の子たちが黄色い声を上げている。
こんな中で私の声なんて聞こえないよね。