「花蓮ちゃん」
そのとき、愛しい声が耳に届いた。
クラスの全員がその声に反応して扉の方に視線を向けた。
もちろん、私も。
教室の入口の扉にもたれて
私を真っ直ぐ見つめている律哉くん。
「ほら、行ってきな」
そう言って私の肩をぽんっ、と軽く叩いて笑ってくれた麗奈ちゃん。
「ありがとう」
私はその言葉に甘えて、
律哉くんのところまで駆け足で向かう。
ザワザワとしている教室なんて放っておいて
いまは律哉くんのことで頭がいっぱいだった。
「僕を待たせるなんて本当にいい度胸してるよね」
私にしか聞こえないような小さな声で言った律哉くん。
ひ、ヒィ…!
なんか怒っているんですけど!?
「律哉くんが来てくれたのに驚いちゃって」
「どうして?来ちゃダメだった?」
その言葉に私は大きく首を横に振った。
滅相もない。来てくれてすごく嬉しかった。



