「ごめんね…僕は誰とも付き合う気はないんだ」
今度は低いけど甘さも混じりた心地の良い声が耳に届き、胸が小さく高鳴る。
…って違う違う!
告白現場に遭遇してしまったのもそうだけど結果が残念な形で終わってしまうって…なんか気分が良くない。
最悪だ…と思っていると壁のすぐ後ろから鼻をすする音が聞こえてきて、彼女は泣いているのだと分かった。
「ごめんね…泣かせるつもりはなかったんだ。
君の気持ちは本当に嬉しいんだけど…」
申し訳なさそうに謝る男の子。
きっと、眉を八の字に下げて女の子を心配そうに見つめているのだろう、と声から想像できた。
「いいんです…っ、先輩は何も悪くないですから…!
私の方こそ突然ごめんなさい。失礼します」
女の子は震えた声でそう言うとバタバタと音を立てながらどこかへ行ってしまった。
見てないのに分かるのは足音が段々遠のいていったから。



