「おんぶかお姫様抱っこ、どっちがいい?」
「どっちも…」
「もちろん、どっちもやだは受け付けてねーって
そんな当たり前のことさすがに分かってよな?」
うっ……どっちも嫌ですって言おうとしたのに。
律哉先輩の悪魔要素を含んだその笑顔は本当に怖い。
拒絶したら絶対、無事には帰れないぞ…花蓮。
だからここはまだマシなおんぶを選ぶしか私には選択肢がない。
「アハハ……おんぶで」
「…ったく、最初からそう言えよな」
私を地面にそっと下ろしてから
再び背中を私の方に向ける律哉先輩。
私は遠慮がちに律哉先輩の背中に掴まった。
立ち上がって歩き出した先輩。
背の高い律哉先輩のいつも見ている視界はこんな感じなんだろうな。
「重てぇーな」
「へっ!?おりますおります!」
「ウソウソ。むしろ軽いレベルだから」
ハハッと私の反応をみて笑っている。
笑い事じゃないよ、本当に。
最近、太ってきて
やばいなって思い始めてるんだから。
「お世辞をどうもありがとうございます」
「自分の可愛さを
そろそろ自覚してください」
これのどこが可愛いわけ?
ブサイクなのは自覚してるから大丈夫。
「もう先輩ったら何言ってるんですか?」
「ほんと、可愛いよ。花蓮ちゃんは」
「なっ…やめてくださいよ!」
そんな不意に…しかも割とマジトーンで言われると
なんて返したらいいのか分からなくなるから。
胸がトクントクンと高鳴っていくのが分かる。



