「やっぱ、人多いな」


「そうですね」



夏フェスで有名なアーティストの人たちが出るだけあってどこを見渡しても人、人、人で気を許したらすぐ迷子になりそう。


不安になっていたとき、左手に温もりを感じて
そちらに視線を移すと律哉先輩と手を繋いでいた。



「ち、ちょっと…!律哉先輩!」


「ん?」



ど、どうしてそんなに平気な顔していられるの?!


私だけこんなにドキドキしているの?
繋がれている手が熱くなっていくのがわかる。


なんか、もうすごく恥ずかしい。



「手が……!!」


「離したいなら勝手に離せよ。
力抜いいてやるから」


「っ…!」



そんなのずるい。
しかも、律哉先輩はちゃんと力を抜いてくれている。


離したいなんてちっとも思っていない。
むしろ、繋いでいたい…と思うくらい。


私っておかしいのかな?


最近、律哉先輩といるとドキドキして自分が自分じゃなくなるし、他の女の子と話しているところを見かけると胸がぎゅっと苦しくなる。


……先輩、これは何かの病気ですか?