「名前、呼んでくれてありがとな」
「……律哉先輩、その笑顔は反則です…っ」
俺から視線をテキストへと移して言った。
俺は笑っていたらしい。
笑おうなんて一ミリも思っていなかったのに花蓮ちゃんを見ていたら自然と頬が緩んでいた。
「照れてる顔、俺だけにもっと見せろよ」
「っ、」
「他の男に見せたら、許さねぇから」
俺だけでいいよ、そんな顔を見るのは。
花蓮ちゃんが可愛いことや意外と強気なことも知っているのは俺だけで十分。
他のやつになんて教えんなよ、見せんなよ。
「は、は、早く終わらせて帰りましょう!」
焦ったように言って、シャーペンを動かす。
そんなのに帰りてぇの?
まあ、俺も付き合ってもないのに…やりすぎたよな。
「うん、そうだな」
完全に王子様キャラ崩壊している。
誰も…見てねぇよな?



