「僕が帰ったら宮園さん夏休みなくなるよ?」
「へ?」
「先生の代わりに僕が宮園さんに教えてくれって頼まれたんだよね」
信じられない…とでも言いたそうな表情を浮かべている花蓮ちゃん。
「まあ、宮園さんが帰ってほしいっていうなら帰ることにするよ。じゃあ、一人で頑張ってね」
そのまま俺はくるりと体を反転させて教室を出ていこうと歩き始めた。
引き止められなかったらマジで帰るつもりでいる。
だって、俺に教えてもらうのが嫌なんだろ?
一人でない頭使って一生懸命悩めばいい。
ついでに俺のことも。
突然、後ろからギュッとシャツの袖を掴まれた。
ふわりと花蓮ちゃんの香りが風に乗って鼻に届いた。
「ま、待ってください…!
先輩と二人きりになるのが嫌とかじゃなくて…その恥ずかしくて……だからその…帰らないでください」
……なんなの?
俺のこと、殺しに来てる?
自分でも信じられないくらい心臓がドクドクと音を立てていて動揺してしまう。
もうさ、こんなの反則だよな。
やることが可愛すぎんだろ。
認めるしかなくなるだろーが。
こんなにドキドキしてて好きじゃねぇなんて言ってたらいつか流星に本気で怒られそうだしな。



