振り返って部屋へ帰ろうとしたけど、急に体の力が抜けて、華は公園のブランコに座って、一時休憩。

「…はぁ、私、毎日何してるんだろ?」

そう言って、俯いた。

「…貴女は、よく頑張ってますよ」

その声と同時に、誰かが華の頭を撫でた。

華は驚いて顔をあげる。

「…三宅さん」

三宅健吾(30)、華の部屋のお隣さん。

健吾はいつもラフな格好で、どんな仕事をしてるのか?謎の男。だが、長身でイケメンで。マンションの主婦の間では、人気。

華は、お隣さんとはいえ、会釈する位の間柄で、突然喋りかけられ、しかも頭迄撫でられ、顔を真っ赤にして立ち上がった。

「…ぃえ、ぁの!ありがとう、すみません、主人の準備があったんだ。それでは」

早口にそう告げて、華は公園を飛び出し、階段をかけあがり、部屋に入るなりバタンとドアを閉めて…

…撫でられた頭を思わず触った。

「…華、どうした?」
「…へ?!」

カバンと弁当を持って玄関に来たのは、サラリーマンの夫、和也(42)

突然声をかけられた華は、声が裏返った。

そんな変な華に、首をかしげながら、和也は靴べらを使って革靴を履く。

「…お、お父さん、忘れ物はない?」
「…ないよ。…ぁ、定期忘れた」

胸ポケットを触った和也は定期券を入れたパスケースを忘れたようだ。

「…もう、待ってて」

華は部屋にいくなり、パスケースを持って、和也の元へ。そして、それを渡した。

「…いってらっしゃい」
「…ん…お前、どうした、服泥だらけ」
「…え、あー、ちょっと。すぐ着替えるから」

苦笑いした華。

会話もそこそこに和也は出社していった。