「…持ってもらって助かりました。ありがとうございました」

部屋の前、華は健吾に礼を言う。

「…また、時間が合えば、試合見に行ってもいいですか?」

健吾の言葉に、華は笑顔で頷いた。

「…もちろんです。みんな喜びますよ。是非」
「…あの」

「…はい?」
「…連絡先聞いてもいいですか?試合の日、メールとかくれたら、助かります」

「…あぁ、そうですね。いいですよ」

何の疑いもなく、華は健吾に携帯番号とアドレスを教え、健吾も華におしえた。

「「…それじゃあ、また」」

お互いに笑顔で会釈して、部屋に戻った。

…。

「…お帰り、華」
「…ただいまー」

「…なんか、凄く嬉しそうだな」
「…え?そう?」

和也の言葉に、首をかしげた。

「…顔が緩んでる」
「…そう?いつも、こんな顔じゃないかな?」
「…だな」

和也に言われて、受け流したが、華はハッとした。

健吾との何気ない会話が、凄く楽しかったのだ。いつも、どんな時も、女扱いしてくれる健吾に、惹かれる自分がいた。

…頭の中で、危険を知らせるシグナルが聞こえているのには気づいていた。

でも、心が動かない女はいない。

…連絡先を交換したのはマズカッタ。

そう思っても、健吾はもう、華の連絡先をしっかり登録してしまっている。

「…ま、連絡先交換しただけだし…大した意味はない、よね」


華は、自分に言い聞かせた。