口を半開きにさせ、瞬きを忘れた目。
「大丈夫?」
低いけど、澄んだ声が遠くで聞こえた。
もう一度大きく揺れた電車に体がもっていかれる。
けれど、その人の学ランを知らない間に掴んでいたお陰で、もうぶつかる事はなかった。
「あっ、す、すみません」
ハッとした瞬間、みるみる赤くなる顔。
恥ずかしくて下を向いて顔を隠した。
ドキドキ高鳴る胸の音が聞こえちゃうんじゃないかっていう位、うるさい。
これ何?
え?
あ、あたしメイクしてないじゃん!
あー、でも学ランに化粧つかなかったから良かった。
って、じゃなくて。
これって……これって。
もしかして……一目惚れとかいう?
嘘でしょ!?
あたしが、一目惚れ!?
あ、靴はナイキだ。
なんて冷静に観察してみたりしても、鳴り響く胸の音は中々消えないままだった。

