【完】DROP(ドロップ)




電車に乗ると、

『扉が閉まりまーす』

と大きなアナウンスと共に閉まった扉。



そして動き出した電車は、ガタガタと揺れる。



うわっと。


目の前にある手すりを掴みたいのに、人が多くて中々掴めない。

もう毎朝毎朝、混み過ぎなのよー。


そう、心の中で文句を言った時だった。



ガタンッ!

と音をたて、左へと動いた電車に上手くバランスが取れず、私の体も左へと流されてしまう。



その瞬間、
目の前の人の胸に顔面からぶつかってしまった。



いったぁー……



そう思いながらも謝ろうと顔を上げた時。




――時が止まった。