「圭矢?」
何度も呼ばれる名前に返事なんて恐くて出来ないよ。
「圭矢?」
お願いだから呼ぶなって。
「圭矢?」
そっと、背中に回った腕が温かくて、俺まで泣きそうになった。
俺でいいの?
追いかけなくていいの?
本当に、回した腕は俺で良かった?
聞きたいけど、聞けなくて。
今何を考えているんだろう。
後悔してるのかな。
優しく回った腕をまだ、信じれない俺は相当駄目男だよね。
だけど。
雫がここに居る事が、こんなにも嬉しいものだなんて知らなかった。
俺、雫が居ないと駄目みたい。
俺、雫がすっごく好きみたいだよ。
迎えが自転車だなんてかっこ悪すぎる。
だけど、雫と初めてした2人乗り。
スピードをあげる俺の背中に、ピッタリと付いた胸から聞こえるトクントクンって音が心地よくて。
俺の音と重なって幸せな気持ちにさせてくれたんだ。

