ねぇ、雫。
その男がいい?
ねぇ、雫。
俺じゃ駄目?
ねぇ、雫。
なら、どうして俺の腕を離さないの?
最後の賭けをしてみようと思うんだ。
もし、それで駄目だったら……。
強く掴んだ腕を。
強く握った肩を。
ゆっくりと離し、
――抱きしめた。
「え……」
小さな声を上げる雫の肩に頭を乗せ、力いっぱい抱きしめた。
小さな体は、震えているの?
それとも、これは俺が震えているのかな。
「駄目。雫だけは駄目」
そんな情けない言葉しか言えなくてごめん。
本当にごめん。
だけど、俺には自信なんてなくて。
だから、駄目なんだ。

