従業員出入口から出て来たのは男。
でも、その後に居るのは……雫だよね?
腰掛けていた石段から立とうとした時、その男が雫の腕を掴んでいたんだ。
一歩一歩、ゆっくりと。
本当なら走って行きたいのに、どうしてこんな時なのに。
俺は落ち着いてるのかな。
真剣な顔で見詰め合う2人。
心臓が
――ドクンッ
と大きく跳ねた。
それでも、俺の足は雫へとゆっくりゆっくり進む。
もし、このまま振られたらどうしよう。
そん時は、陸に文句言ってやるんだから。
寝てた陸が悪いってね。
それくらいの八つ当たりは許してよね。

