【完】DROP(ドロップ)




そう思ったら、じっとなんてしてられなくて。

自分が芸能人だという事も忘れて。



陸の部屋へ走り、自転車の鍵を借りて……向かったんだ。



雫のバイト先へと。



ちょうど閉店間際で人も少なくなっていた。

端に自転車を止め、隠れる様に雫を待ったんだ。


俺、ストーカーみたい。

なんて思いながらね。


だけど、今じゃなきゃ駄目な気がして。

次に会った時じゃ遅い気がして。



時間が経つにつれ、照らしていたネオンが消える。



中からバイトが終わった人々が次々と出て来るのに、雫の姿はなくて。



今日、本当にバイトだったのかな。

そんな事まで思い初めてた。



雫が嘘をつくはずがない。

そんな気持ちと、

バイトだって嘘をついてあの男と会ってるのかもしれない。

雫を疑う俺。



頭の中はぐちゃぐちゃ。


ねぇ、雫。

お願いだから、早く……早く出て来てよ。



後10分。



それで出て来なかったら、携帯に電話してみよう。


そう思った時だった。