【完】DROP(ドロップ)




「あ、……もう時間ない?」



冷たく言われた言葉は、俺の声を震わせた。



《ごめん》

「そっか……また電話するから」



だけど、雫からの返事は何もなくて。

今日、会って沢山話して。



このモヤモヤする想いも、気になって仕方がなかった事も全部……全部スッキリするはずだった。



それなのに残ったのは、もっと大きな



――不安



それだけだったんだ。




暫くして、陸が起きたからと部屋を出た奈央。

一人残された俺は、考えても考えても雫の事ばかりで。



バイト仲間って言ってたよね。

今日も、あの男と一緒なの?



ねぇ、雫。

それは誰?

雫にとって大切なひとなの?

俺より。

俺より大切な人を見つけたの?