それから、雫からのメールは1日に2~3回。


『おはよう』から始まり『おやすみ』で終わる。



あの男の声については触れない。

雫も奈央の事には触れない。



今はメールしかにのに。

2人を繋ぐのは、メールしかないのにね。



そんな時だった。



雫から、夕方になっても一通も来ないメール。

雫が夏休みに入ってから初めてだったんだ。


もしかしたら風邪でもひいた?

もしかしたら事故にでもあった?



もしかしたら……。



あの男と会ってるの?



考えれば考える程、嫌な事ばかりが思い浮かんで苦しくなる。



「あ、KEI。明日ね、オフになったんだけど」

「え?」



メンバーとマネージャーが話していて、休憩から戻った俺に声がかかる。



「でも今日の撮影はあるから戻るの夜中になるだろうし。
東京に帰っても明後日の朝一に出なきゃ駄目なんだよ。
だから、このままホテルに泊まって明日はゆっくりする? って聞いてたんだけど…」

「俺は、どっちでもいいよー」

「俺もー」



皆がそれぞれに口にする中、俺だけは違った。