《え……、あっ。うんっ! バイトの帰りにね、バイト友達とご飯に行くとこなんだ》
「ふーん……バイトどう?」
これは、ヤキモチ。
俺が居なくても雫は、バイト仲間と楽しくやってるんだって。
そんな事を思ってしまった。
会いたいな、って思ってるのは俺だけなのかな。
そんな女々しい事まで考えてしまって。
《んー、大変だよー暑いしねっ!》
雫の明るい声で、その気持ちは薄れていく。
俺の中に出来たモヤモヤが、雫の声で消えるんだ。
「そっか。俺も見てみたいな、雫が働いてるところ」
《絶対! 駄目!》
何気なく言っただけなのに、急に大声で叫ぶ。
「えー、何で?」
《駄目って言ったら駄目。あんな姿見せれないもん……》
「見たいのになー」
今、絶対に携帯を両手で持って少し赤い顔してるんだろな。
こんなに遠く離れているのに、雫の行動や顔が目に浮かぶんだから、凄いよね。
クスクス笑ってる俺。
必死に“駄目、無理”を言う雫。
穏やかな時間は、あっという間なんだ。

