「あ、いきなりすみません! 電車来ますね」
そう言った時、上手くホームに電車が入って来た。
次々と降りる人の波が過ぎると、乗り込んだ圭矢君。
それに続いて、あたしも乗り込む。
勿論、車内も隣に!
なんて思っていたのも空しく、気付けば遠く離れてしまった距離。
向こうの方には、圭矢君の涼しげな顔が見える。
あたしといえば人に、もみくちゃにされながら立っているのが、やっと。
背が高いっていいなぁー。
“安藤圭矢君、D高校の3年生”
たった、これだけかもしれないけれど話せた事に大満足。
次会った時は、携帯の番号を聞けるといいな。
あ、メアドの方がいいかな。
もっと沢山話して、もっとあたしを知ってもらって。
仲良くなったら告白とかしちゃって……♪
なんて、簡単に考えていたのかもしれない。
それ以来、D高校の制服を見るだけで、ドキドキ胸が高鳴って。
でも、圭矢君じゃないとわかると凹んで。
そんな期待だけの毎日が過ぎていった。

