「あ、あのっ!」
声をかけるとゆっくりと振り向いた学ラン君と目が合う。
あたしは、少しずつ目線を下に向けてしまった。
「はい?」
あの時と同じ低くい澄んだ声。
また目線を上げると、ん? そんな顔であたしを見下ろしていた。
「あ……あの時は、ありがとうございました!」
「え?」
「2週間くらい前に電車でぶつかってしまったんですけど……」
少し困った顔を見せる学ラン君に、
「あ、覚えてないですよねー」
なんて、笑って言ってみる。
「あ、うん。ごめんね」
あたしが謝る方なのに、逆に謝られてしまった。
それに覚えてなかったんだ。
ガックリ、そんな言葉がピッタリ。
だーけーど!
ここでめげてちゃ駄目!

