薄明かりの中、
そのひとの顔が見えた。

20代半ばくらいだろうか。
綺麗な黒髪はショートで、
左耳にピアスが光る。
泣きぼくろが目立つ、
中性的で綺麗な顔。


「ここに来れば、
思い出が手に入るとききました」


いざとなって緊張したわたしの声は
まるで入口の鈴のように
カラカラに乾いていた。


「いかにも、
“更新”頂いている方でしたら
どんな思い出でもお渡し可能です」


男なのか女なのかわからない
そのひとの声に
穏やかな微笑みが加わった。