「黒龍?」
励也が呟く。
「黒龍って、数年前に全国トップの暴走族を潰したと言う、あの?」
と一也。
「でも、一体誰のことを……」
桜華蓮のみんなは訳がわからない顔をしていた。
「まさかとは思うが、それを知らずに仲間にいれてたのか?とんだバカだな、桜華蓮も落ちたもんだぜ」
蛇玖竜の総長が挑発するかのように言う。
「そいつだよ、黒龍ってのは」
蛇玖竜の総長は指をさす。
励也でも一也でも、翔でもない。
無論、楓でも澪でもない。
「佑樹の姉の文月夏蓮」
そう、指をさされていたのは夏蓮だった。
「嘘…………夏蓮が……」
楓は思わず口にした。
楓だけでなく、澪も励也も一也も翔も驚きを隠せないでいた。
でも、一番驚いていたのは夏蓮だった。
「数年前、お前が潰した族は俺の兄貴がいたところだ。俺はその日、たまたまその倉庫に遊びに行くことになってた。だが、俺が着いた頃には、半数が殺られてて挙げ句の果てには、目の前で俺の兄貴を殺られた」
夏蓮はうつむく……
「だから復讐しようと心に誓ったんだ。そしたら、あれから黒龍の名前を聞くことはなかった。俺は屈辱だった。自分の復讐を果たせなかったからな……だが数ヵ月前、黒龍には弟がいるとわかった。こんな好都合なことはねぇ。すぐさまお前の弟の佑樹に目をつけた」
佑樹も顔をあげることができない。
「そしたら、まだ姉貴は生きてるということもわかってな……それからだ、俺の復讐劇が始まったのは」
総長は少し間を置くと、
「なぜあのときから姿を現さなかった?」
そこにいる皆の視線が夏蓮に集まる。
「…………ぃ」
「夏蓮?」
澪が心配そうに聞く。
「……わからない……」
夏蓮はそう呟きながら頭を押さえる。
「夏蓮……落ち着いて」
励也も言葉をかける。
「まあいい、今は佑樹のことが先だ」
すると総長は小瓶の蓋を開けた。
「これでおしまいだな」
総長がそれを佑樹の口元に持っていった。
佑樹は抵抗したくても、ガタイのいい大人に押さえつけられて、ピクリとも動かない。
