「俺がもっとしっかりしていれば…」
「……励也さん、この世に完璧な人間なんていないんですよ?」
励也さんは黙って私の話を聞く。
「だから私、逆に良かったって思ってます」
「……!」
「完璧に仕事をこなす励也さんにも、予想外の事が起きるんだって」
失礼かもしれないけど、本当にそう思った。
今まで、失敗しない励也さんが逆に怖かった。
だから寧ろ、こんなことがおこって、
あぁ、励也さんも人間なんだなって思うことができた
けど、やっぱり怖いのは怖い……
本当はあまり男の人に近寄りたくない……
あ……どうしよう……
思い出したら震えが……
ギュッ
「え……?」
震える私を優しく励也さんが抱き締めてくれた。
「怖かったよな……ごめん。今度は守るから」
何でだろう……
励也さんの声を聞くと安心する。
「無理はしないでくださいね?」
私がそう言うと少し笑って、
「うん。心配しないで」
