「ふぅ…」

狂史郎は溜息をつく。

「何って言うほど大層な事じゃあない…俺は南条の家じゃ落ちこぼれでな。ジジイやババアに教わった降霊術の初歩の初歩も、まともに出来ねぇような落第生だった。降霊させたはいいが、降ろした霊を自分でまともにコントロールも出来やしねぇ」

そう言った狂史郎の背後に、禍々しい、あまりにも禍々しい澱んだどす黒い気配が立ち昇る。

霊感なんてものがない人間でさえ、敏感に感じ取って体調を崩してしまうほどの怨念の塊。

「言っただろう」

狂史郎は言った。

「降ろしたんだよ。相当に性質の悪いのを1柱、ガキの頃に。悪霊なんて上等なもんじゃあねぇ。限りなく悪神に近いような奴をな。それが制御できなくて、俺の体に間借りしているような感じだ。俺に危害を加えようとする奴には、悪意があろうとなかろうと、手加減無しに攻撃を仕掛ける。『間借りした部屋』を壊されるのは気に入らねぇらしい」