ある時代ある場所

貧富の差が激しさを増し乱れきった世の片

隅でこの少年レイは孤児が故に生きるため

盗みを覚えていた。

風のように早く光のように美しい、レイは

瞬足の持ち主だ。

レイはこの日、市場のパン屋を狙っていた。

ここのパン屋は週に1度山のようなパンを

通りで売っている。

「2.3個取れればいいや」

ニカッと笑った白い歯を最後に痩せ細った

小柄な体を路地から投げ出し目当てのパン

屋に走った。

噂通りの俊敏さでパンを3つ奪うと、

自慢のその足で醜く太り金のある者にしか

見向きもしない穢れきった心を持った大人

たちなどには決して追いつくことは出来な

いスピードで一目散に路地から路地を抜け

寝床にしている廃墟の中のマンホールの中

に入った

「ただいま!!」

「兄ちゃん!」

「みんな兄ちゃんがパン持って帰ってきた

よ!」

小さな子供たちが4人集まってた。

「分け合って食えよ」

やはりニカッと笑うその顔はまだまだ幼さ

を残した少年の面持ちだった。