気づいていました…。お母様がなぜあんなに

も贅沢をさせたのかを。

気づいていました…。お父様がなぜあんなに

も寂しそうに私を見たのかを。

分かっていました。今日で終わりなのだと。

この大好きな両親との生活が今日で終わる

ことに。

あの晩、ふたりが暖炉の近くで話していたの

を聞きました。街一番の籠細工職人の家とは

いえ、決して裕福というわけではありません

でした。

もちろん食事が取れない時もあれば水さえ

口にできない日々もあったんです。

奴隷産業が盛んになり人さえもが売り物と

なった今では籠もよく売れるようになり質

素ではあるけれど毎日食べられるように

なりました。

「あなた…もぅ苦しいわ…。

いつもあの子のお腹を満たしてあげないと

と思って食事を作っていたけれど…。

もぅ家族3人分の食事を3食、毎日用意する余

裕はもぅないの…」

「あぁ…わかっている…

だが娘を…可愛いエラを…売るのか…。」

聞いてしまいました。

この街にも人さらいの手が伸びていること

奴隷産業が入ってきていることも有名な話

でした。

お母様…お父様…

私は売られるのですね。あなた達が生きるた

めに。恨みません。仕方の無いことですか

ら。

「エラ、お風呂へ入ってきなさい。綺麗にお

めかしをして街へ行きますよ。」

あぁ…

今日なのか…お別れを言葉で伝えることは

できませんでしたがあなた達ふたりへの思

いを認めた手紙を家中に隠しました。

どうか見つけてください。私のふたりへの溢

れんばかりの感謝を綴りました。

お母様、お父様これでお別れです。

どうかお元気で…さようなら。