貧富の差で力のない子供たちが売られ、その

金で食うて生きる大人に怒りを覚え、金にも

のを言わせて少女を己の慰みのために買っ

た男を恨んだ。なにより俊足で頭が切れるか

らと俺をアクライルの屋敷に売った両親を

心底恨んだ。

自分がなんの感情を抱きあの少女を助けよ

うとしているのか全くわからなかった。ただ

許せなかったこの世の全てが…神が…。

屋敷の門の前につくと見慣れた不思議な服

を着た男が2人立っていた。いつか自分もこ

の服を着てあの男のために護衛官としてこ

こで働いた。正確には奴隷として務めた。

忌まわしく憎いあの服を目にした途端に自

分の中の憎しみが弾けた。

「何者だ!!ここに近ようてはならぬ!!」

俊足のレイ。

風と呼ぶには粗末なものだがそれでもやは

り足は早かった。

「レイ…?レイか!?」

「なに!?」

屋敷から抜け出し奴隷からの闘争を図った

レイの存在は街でとても有名な話だった。た

だ背格好や顔を知っているのは屋敷のもの

だけだったため街のものは知らないし屋敷

のものもわざわざ市場の外れの路地をいく

つも抜けた先の廃墟になど来ない。

そこであの廃墟を寝床としたのだ生きるた

めにいつか復讐するために強くなるために。

門兵2人を切り裂いき邸宅に侵入し使用人や

警備、メイドを次々と切り捨て少女を探した

た。どこにいるのかまだ地下の牢屋にいるの

かもしれない。ありとあらゆる扉を開いて行

くとあいつを見つけた。満足そうに艶づやと

した顔に汗をかきニタニタとしたいやな笑

を見せていた。

「父上!!あの奴隷の娘はどこにいるので

す!?僕の奴隷です!!」

「何を言うか!?ワシが買うたのだ…。まずワ

シの相手をさせたのだ…なに味見程度だ」

なんという事だ。少女はもうこの男の手によ

り汚されたというのか。

大きな音を立てドアを開け放ち手前にいた

やつの息子を切った。

「うあぁぁぁぁああぁぁあ…」

息子の末声を耳にしたあの男は振り返る。

「キサマ!!どこからか入っ…うぐぅ…」

あの男…かつての主人を切り裂きこの後

からの記憶をほとんど残さず屋敷中の人間

を殺した。

最後に開けた扉広く広く暗い部屋の1角で月

明かりを受けて明るいベッドの上に座る少

女の顔には笑みがある。